一之瀬さんちの家政婦君


「今日は大学になにか用事だったんですか?」


「いや、今日は君に用があって探してた」


「ぼ、僕に……?」


飛鳥は思わず自身を指さす。


「そうだよ。それにしても、女の子で自分の事を“僕”なんて珍しいな。まぁ、俺は気にしないけど。はい、コレ」


男性が差し出したもの。

それは、無くしたはずの学生証だった。


「どうしてこれが……」


「道でぶつかった時、落としたでしょう。拾って渡そうと思ったらサッサといなくなったからさ」


「……ありがとう」


落し物をわざわざ届けてくれたのだと分かるとなんだか申し訳なくて、飛鳥は俯き加減に差し出された学生証を受け取った。


「ここに来たって事は、この中……見たんですよね?」


「見なきゃ届けようがないからね」


「じゃあ、僕の性別、知っちゃってますよね!?」


飛鳥はグイッと迫る勢いで問い質す。


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