一之瀬さんちの家政婦君


成り行きでついて来てしまったが、大学の近くにこんな素敵な喫茶店があったなんて飛鳥は知らなかった。

周囲をぐるりと見渡して、細やかな飾りつけのセンスに感動すらしてしまう。

そうこうしているうちに櫂人が店の奥から戻ってきた。


「はい、どうぞ」


チーズケーキとホットコーヒーが飛鳥の前に出される。


「あ、あの……」


注文もしていない食べ物に飛鳥は戸惑いの表情を窺わせた。


「もしかして、嫌いだった?」


「ケーキもコーヒーも好きです。けど……」


彼も飛鳥の言いたい事を察したようで、カウンター越しで苦笑する。

「本当は“初来店のサービスです!”ってカッコ良く言いたいところなんだけど、このケーキは
俺が作った試作品なんだ」と言う。


「試作品……」


飛鳥は試作品だというチーズケーキを見ても、とてもそんな風には見えない。

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