一之瀬さんちの家政婦君
Episode.3 君は誰のもの?
今日は珍しく一之瀬さんが朝からずっとマンションにいる。
自宅なのだから居ようと居まいと本人の自由なのだけど。
早朝から一言も話さず大量の新聞を読み漁っているかと思えば、眉間に皺を寄せてパソコンを睨みっぱなし。
空気が重いったらない。
「あの、コーヒーどうぞ」
“休日らしく少し休んだらいいのに”という思いも込めて飛鳥は一杯のコーヒーを差し出した。
ありがとうなんて言わない。
それどころか、顔すら向けようとしない。
ただ、差し出されたものに黙って手を延ばすだけ。
飛鳥にしてみれば非常におもしろくない。
何よ、人を空気かなんかみたいに……
飛鳥は小さなトレーを抱いて、不機嫌そうにキッチンへさがった。