一之瀬さんちの家政婦君


休日の昼下がり、街は家族連れを中心に多くの人で賑わいをみせている。

小学生くらいの女の子がお父さんと手を繋いで向かいから歩いてきた。

仲睦まじい親子の姿。

飛鳥は、幼少期に父親と近くの商店街に出かけた日の事を思い出した。

母を亡くしてまだ日が浅かった頃。

小さかった飛鳥の気晴らしにでもなればと思ったのだろう。

子どもとは本当に呑気なものだ。

チョコバニラのミックスソフトを買ってもらってルンルン気分だった。

今考えれば、母の死についても本当の意味で理解なんてしていなくて、気晴らしがしたかったのは実は父の方だったのかもしれない。

それを証拠に、母を失ってからの父は少しずつおかしくなっていった。

今までの仕事を突然辞めて、酒とギャンブルにのめり込んで、母以外の女性と夜通し遊んではあまり家に寄り付かなくなった。

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