一之瀬さんちの家政婦君
「誰も“逃げる”とか言っていないだろ」
「じゃあ、なんで監視なんか……」
「監視って言えば聞こえは悪いが、相手の居る場所が分かれば便利だって事。要は目的の問題だろ。居場所が分かったところで誰と何をしているかまでは分からん」
「でも……アタシの買い物の様子とか知ってたじゃないですか」
「全ては憶測にしか過ぎん」
「何か納得いかないんだよね……」
和真の話術によっていいように言い包められてしまったようで、不完全燃焼の飛鳥は口を尖らせる。
不満を漏らしながらも品物全てを整理し終えたところで、心のモヤモヤの原因が何であるのか閃いた。
「そうだ!一人だけ居所が分かってしまうから納得がいかないんだよ!一之瀬さんの居所も分かってしまえば平等で――…」
「断る」
和真は飛鳥の提案に食い気味で言葉を割り込ませ切り捨てた。