一之瀬さんちの家政婦君
そうだ。二人は平等じゃない。
飛鳥は和真の所有物。
お金で繋がった関係にすぎない。
借金の返済を済ませるか、どちらかがこの世からいなくなるか、もしくは……和真が飛鳥に飽きて捨ててしまうか、このどれかで関係は簡単に終わってしまう。
終わってしまうのだ――…
突然、飛鳥は激しく首を左右に振って、頭を撫でる和真の手を振りほどいた。
まるで、この関係がずっと続けばいいと思っているみたい……!
飛鳥はキッと睨みつけながら、高身長の和真を見上げる。
彼女が分かりやすく困惑している事に和真も気付いていた。
しかし、彼はとくに声を掛けようともしない。
ただ、飛鳥のしかめっ面を見ているだけだ。
「小腹が空いた。なにか作ってくれ」
「えっ……はい。何がいいの?」
「そうだな……」
和真はしばらく考えた後「オムレツ」とリクエストする。
「かしこまりました」
飛鳥は了解して、すぐに調理にとりかかった。
不機嫌だった気持ちをほんのちょっとだけ浮上させて。