一之瀬さんちの家政婦君
Episode.4 感謝しているからこそ
オムレツを振る舞った日以降、和真が飛鳥の手料理を食べる回数も増えた。
だからなのか、学校の講義を受けている時もスーパーで買い物をしている時も和真の顔を思い出す事が多くなった。
特に、飛鳥のお手製オムレツを食べている時の顔。
美味いともまずいとも言わないのだけれど、満足気でどこか懐かしむような穏やかな表情をしているように見えた。
そんな彼の表情を見るのは初めてでどうにも忘れられない。
お母さんレシピのオムレツがそんなに美味しかったのかな……
飛鳥が和真に振る舞ったオムレツは、飛鳥の母 双葉(ふたば)が生前に残していたレシピノートに書き留めてあったものの一つだった。
飛鳥は母が亡くなってから、そのノートを見て一つ一つ料理を覚えた。
“料理は人を笑顔にする魔法”
最後のページにそう綴られていた。
この言葉は決して嘘ではなかった。