一之瀬さんちの家政婦君
「こんにちは」
飛鳥は大学帰りに喜島珈琲店へ立ち寄る。
以前、飛鳥が櫂人から受け取った豆で淹れたコーヒーがとても美味しかったのだ。
和真も気に入っているようでよく飲んでいるところを目にする。
ストックが乏しくなってきたので補充に来たというわけだ。
そのついでに、同じく櫂人からもらった割引券を消化してしまおうという目的もあった。
「飛鳥ちゃん、いらっしゃい。珍しいね」
櫂人がいつもの柔和な笑顔で出迎えてくれる。
飛鳥が自分から店に顔を見せることに少々驚いている風もあった。
今日の喜島珈琲店には数人のお客様がいる。
若い女性が二人とカウンター席には老紳士が一人。
淹れたてのコーヒーの香りが店に広がっている。
「こちらへどうぞ」
飛鳥は前と同じカウンター席に案内された。