一之瀬さんちの家政婦君
「酷いなぁ。俺も一応大人だよ?社会人だよ?」
飛鳥が焦って言葉選びに失敗しただけだと分かっているからこそ、櫂人は笑って受け答えが出来る。
「……だって、この間は他のお客さんがいなかったから働いているところなんて見れなかったもの」
「いたじゃん、飛鳥ちゃんがさぁ」
「あっ……」
言われてみれば、飛鳥が初めてこの店を訪れた時も櫂人はちゃんと働いていた。
成り行き任せに連れて来られて、そんなこと見ている余裕無かった。
「男の仕事姿見て、ちょっとは見直してくれた?」
「えぇ、まぁ」
飛鳥はふふっと小さく笑って、コーヒーカップにそっと口付ける。
「ゆっくりしていってよ。豆も準備しとくからさ」
「お願いします」
飛鳥との会話が一段落着くと、櫂人は今しがた入って来た新たなお客様を席に案内しに行った。