一之瀬さんちの家政婦君
男は地下駐車場から更に奥へと続く。
勿論、飛鳥もついていく。
のんびりとした雰囲気の管理人がいる場所を横切り、数メートル奥に入った突き当たりにエレベーターが完備されている。
二人はそれに乗り込んだ。
“45”
男は迷わずそのボタンを押した。
すると、エレベーターは上に向かって静かに動き始める。
乗っている感覚を忘れるほど揺れが少なく、内装もただ豪華というよりは品のあるこだわりが窺われた。
飛鳥の予想が合っていれば、目的地は四十五階。
最近、ショッピングモールの階数程度しかエレベーターで上がっていない飛鳥にとって、四十五階までの時間は思いのほか長く感じられる。
“チン”と到着を知らせるベルが鳴ると、内心『やっとか……』と思わずにはいられなかった。
開かれた扉の先は想像もしていなかった別世界。
「なにココ……」
飛鳥はポカーンと口を半開きにして立ち尽くす。
「早く降りろ」
男に後ろから押されて、彼女はようやくエレベーターから出たのだった。