一之瀬さんちの家政婦君

男は地下駐車場から更に奥へと続く。

勿論、飛鳥もついていく。

のんびりとした雰囲気の管理人がいる場所を横切り、数メートル奥に入った突き当たりにエレベーターが完備されている。

二人はそれに乗り込んだ。

“45”

男は迷わずそのボタンを押した。

すると、エレベーターは上に向かって静かに動き始める。

乗っている感覚を忘れるほど揺れが少なく、内装もただ豪華というよりは品のあるこだわりが窺われた。

飛鳥の予想が合っていれば、目的地は四十五階。

最近、ショッピングモールの階数程度しかエレベーターで上がっていない飛鳥にとって、四十五階までの時間は思いのほか長く感じられる。

“チン”と到着を知らせるベルが鳴ると、内心『やっとか……』と思わずにはいられなかった。

開かれた扉の先は想像もしていなかった別世界。

「なにココ……」

飛鳥はポカーンと口を半開きにして立ち尽くす。

「早く降りろ」

男に後ろから押されて、彼女はようやくエレベーターから出たのだった。
< 7 / 151 >

この作品をシェア

pagetop