一之瀬さんちの家政婦君
飛鳥は一人きりで朝食を終えて、コーヒーを啜りながらぼんやり考える。
豪邸のような立派なマンションに住まわせてもらい、毎日お腹いっぱい食べさせてもらって、たとえ男性用の服であっても値段が高そうな良い服を着させてもらっている。
三億の大金をつぎ込んで人身売買した事実は感心しないが、乱暴をはたらいたり、人に言えないような趣味に付き合せたりするような家主ではなくて。
口が悪くて秘密主義なところは玉に瑕だけど、きっと根は優しい人。
それが、飛鳥が分析する一之瀬 和真という人物の全てだ。
男性として生活をさせているのだって何か理由があることぐらい飛鳥にだって理解できる。
理解して、なるべく気にしないようにしてきたのに、秘密がバレて、その焦りで言わなくてもいい言葉を口走ってしまった。