一之瀬さんちの家政婦君

『和真様は良い子ですね……』


幼かった和真によく声を掛けてくれた家政婦を思わせた。

家政婦だった双葉には一人娘がいると本人から聞かされていた。

きっとこの子がその一人娘に違いない。

目元や口元が母親によく似ている。

「ホントはね、ママにあげるんだったけど……おにいちゃんにあげるわ」

女の子はそう言って白い百合の花を和真に手渡す。

母親がいなくなって彼女が一番悲しくて、一番寂しくて、一番泣きたいはずなのに、そうしないのは和真のように悲しみの淵から這い上がれない誰かにこうして手を差し伸べる為なのだろう。

「…………」

和真は白い百合の花を受け取って、女の子の小さな身体を抱きしめた。



この子は守られなくてはいけない。



俺が必ず守ってみせる。どんな手段を使っても――…


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