一之瀬さんちの家政婦君
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和真のマンションを出た飛鳥はすぐに大学の休学届を提出して、郊外のとある漁港で住み込みのアルバイトに就いていた。
給料と住処が与えられて、美味しい魚が格安で手に入る。
朝は早くて体力仕事だが、和真に借りているお金を一日でも早く返す為には贅沢を言っていられない。
「飛鳥ちゃん、先お昼いっちゃいな!」
漁港で一緒に働いているおばさんが大きな声で飛鳥に声を掛ける。
右も左も分からない飛鳥の面倒を見てくれている心優しい人。
『今時の若い娘がこんな場所で働かせてくれなんて、余程の理由があるんだよ』
そう言って、漁港長と掛け合ってくれたのもこの人だった。感謝してもしきれない大恩人。
「はーい!」
飛鳥はおばさんに負けないようにお腹から声を出して返事をした。