一之瀬さんちの家政婦君
「それで、飛鳥ちゃんこそ何でこんな場所に?大学は?」
櫂人は首を傾げる。
ごもっともな質問。
「大学は休学中で……」
「そっか。飛鳥ちゃん、色々悩んでたみたいだもんな。それにしても、今日は買い物?市場もあるし」
櫂人の質問は続く。
しかし、答えを飛鳥が言う前に、櫂人は彼女の格好を見て「――…じゃなさそうだね」と結論付けた。
黒いエプロンにビニールの長靴姿では、買い物ではないことくらいすぐに分かってしまう。
「ここで働いてるの?住んでる地域からちょっと遠くない?あの過保護な家主さんが黙ってないんじゃないかな……」
「…………」
彼は心配して気にかけて聞いてくれている。
そういう人だと飛鳥は知っているから、余計に言葉が出ない。
彼に心配をかけずに今の状況を説明する自信が無かった。