嘘は取り消せない
彼女、か…………
「どっちだと思う?」
「なんか、スッゲー可愛い彼女いそう」
「うんうん、兄ちゃんイケメンだからさ」
「残念ながら今はいないし、
これからも作るつもりは無いよ」
「ちぇー、つまんねーの」
そう、今はいない
昔は桜がいた
自分の気持ちはまだ定かではないけど、
今、桜のことが好きなのは確かだから
「でも、昔はいたんでしょ?」
「うん、別れた、けど」
「どんな人だったの?」

「可愛くて、頭が良くて、でも運動が苦手で
すごく優しくて、明るくて、一緒にいて
すごく楽しい子だよ」
「そして、全然幸せになれない子」

「え、幸せになれないの?」
「どうして?」
「どうしてって言われても」
どうしようもない
少しでも楽しいと、幸せだと
感じてもらうしかない
「兄ちゃんが幸せにしてあげたら
いいじゃん」
「え、俺が?」
「うん」
「でも、俺、その後にすごいひどい事
言ったから」
「じゃあ尚更幸せにしてあげないと」
「もしかして、兄ちゃん、拒絶されるのが
嫌なの? 拒絶されても、好きなものは
好きでしょ?」

拒絶されても、好き……………
確かに桜に嫌い、と言われた日は相当な
ショックだった
多分今までで一番悩んだ時だと思う
なんで自分がそんな気持ちになるのかが
まだ理解出来ずに……………

出した答えは、俺が依存してたから

依存、まぁ、寄生でも一緒だけど
依存対象がいないと生きていけない
俺は、そんな自分が嫌だった
桜を依存対象として見てたことが
嫌だった

だけど、子供たちは拒絶されて悩むのを
好きという感情からだと言うのか
好きだから拒絶されるのが怖い
でも、拒絶されても相手のことが好き

「ありがと、教えてくれて」
「えぇ!兄ちゃんがお礼言うなんて!」
「なんかすごく新鮮 兄ちゃんでも
分からないことあるんだ」
「俺だって人間だよ」

そう、誰だって人間である限りは
分からないこともある
だから、それを教えあっていきていくんだ
桜は俺に好きという感情を教えてくれた



_______________俺は桜に何を教えられた?

_______________何を与えることが
出来たんだ?

「ははっ、簡単なことだね」
俺は桜に“幸せ”を教えてあげよう
嫌というくらいに


「え、え、」
「何?」
「え、兄ちゃんが、兄ちゃんが笑った!?」
「そんなに笑わなかった?」
「いつも難しそうな顔してた」
「うん、怖いくらいに」
「なんかごめん」
「じゃ、兄ちゃんに彼女で来たら
教えてくれよ! 大切な教え子ですって」
「ん、分かった」


またいちからリスタートさせよう
九ノ瀬より、スタートラインは遠いけど
これでも桜と付き合ってたことがあるから、
大体のことはわかる


「クスッ、負けないよ、九ノ瀬」
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