嘘は取り消せない
樹side

クリスマスイブ
「外は楽しそうだね」
病院の外からはすごく楽しそうな声
「そうだね」
「ま、俺たちはここで
楽しめばいいんですよ」
「桜がいないと楽しくないですし」
「うん、そうだね 桜がいないと
ダメだもんね」
「もうすぐ母さん達が到着らしいよ、樹兄」
「ん、分かった」

病室はいつもの白に統一された部屋ではなく
クリスマス仕様になっている
有休を使って一日早いクリスマスパーティー
明日から父さんは仕事が忙しくなるから
まぁ、父さんは桜を心配しすぎて後輩に
かえされると思うけど

「あらあらぁ、すごい飾り付けね」
「こりゃ、片付けが大変だな」
「あ、お邪魔してます」
「こんにちは」
母さん達には母さんお手製の
クリスマスケーキを作ってもらった

「ん?これは何かしら?」
扉付近に置いてある鶴の置物
「あ、それはバイト先の店長がくれた
長生きする置物らしいです」
「じゃあ、蛍君の持ってるのは?」
「生徒達が作ってくれた千羽鶴です」
みんな鶴ばっかりだな
ま、鶴は長生きの象徴だし

桜とまたクリスマスパーティーが
出来るなんて思わなかった
前は、余命宣告で、もうクリスマスを
祝うことがなくなると思っていたから

だけど、今桜はここにいる
起きてはいないけど、しっかりここに
存在している

「桜の居場所はここだよ」

いつ帰ってきてもいいように、老朽化が
進んでいる家も何も動かしてない
母さんの友達で、蛍君の上司である
塾長はいつでも戻ってこれるよう
席はとってあるそうだ

_______________全て桜が目を覚めると
信じて行っていること

信じればきっと叶うはずだって、
どんな物語でも言い続けるよね
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