嘘は取り消せない
それから大人組だけ残り、子供だけ帰らせた
九ノ瀬君は特に最後まで残ると言い張ったが
最後は渋々退いてくれた

「こうやって3人で話せるなんてね」
「何年ぶりかしら」
「ま、今日くらいはすべてさらけ出そうよ」
「樹の言う通りだな」

それから適当に駄弁っていた
世間話、仕事の話、思い出の話……etc
たくさん話した

「そういや、樹は結婚しないの?」
「何言ってんだよ、母さん 俺まだ26だよ」
「26だからだよ 母さんも心配してんだぞ」
「いたとしても、桜が目を覚ますまで
結婚はしないつもり」

桜には絶対参加してほしいから

「あーでも、桜が結婚することになったら、
俺泣くかも」
「あ、俺も」
「私もだわ」
「みんな泣くじゃん」
桜が家を離れていくことは怖い
だけど、桜が幸せになれないこと、
これからずっと目を覚ましてくれないことが
それ以上に怖い

「桜、もうすぐで俺30歳になっちゃうよ」

「ヨボヨボになる前に絶対目を
覚ましてくれよな」

ヨボヨボにになるまで……………
それは詰まり、お爺さんになっても
桜が目を覚まさなかったらずっと
見舞いに行くということ

「桜は目を覚ました時なんていうだろう」

目の前がお爺ちゃんだったら
驚くかな、怖がるかな
だけど、やっぱり桜は優しいから
笑顔で迎えてかれる

きっと、そうだよ


いつか目を覚ましてくれる
そんな情景を思い浮かべながら………………
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