嘘は取り消せない
桜side

九ノ瀬君に告白された
すごく、驚いた
そんなこと思ってくれてるなんて思わなくて
九ノ瀬君はすごく優しい
明るくて、見てる方も気持ちが和らぐ
私に泣いていいと言ってくれた



だけど私は蛍のことを忘れられてない

それは好きという感情から?
ただの罪滅ぼし?

今は自分の感情がわからない

こんな生半可な気持ちで答えては失礼だ


もうそろそろ湊が帰ってくる時間だ
確かハンバーグが食べたいって言ってたよね
「よし、作るか」

この気持ちを悟らせない
心配させたくない

キッチンにたって数分後
湊がゆっくりリビングに入ってきた
あれ、いつも湊は玄関でただいまと言う
私聞こえてなかったのかな
なるべく明るく
いつもと変わらないように
「あ、おかえり ごめんね 気づかなかった」

「さっき九ノ瀬さんにあったよ」
九ノ瀬君が出ていった時にすれ違ったのかな
「あぁ、さっき話しててね」


「桜姉、無理はしないでよ」


やっぱり気づいてるのかな

「ごめん」
急な謝罪
今聞くとどうしても泣いてしまいそうになる
だからあえて聞こえないふりをした
「ううん 何でもない」
多分九ノ瀬君に何かを言われたんだろう
湊は昔から嘘が下手だった
心が優しくて綺麗だから
それに比べて私は湊と正反対

すると話を変えるかのように湊が近づき料理に目を向ける
「あ、ハンバーグだ」
「湊が食べたいって言ってたでしょ」
「うん ありがと」
「お兄ちゃん何時くらいに帰ってくるかな」
「分かんない」
「そっか……」
「今日くらいはみんなで食べる?
お父さん達はいないけど」
「うん! じゃあそうしよっか」

そして夕飯作りの続きをする

途中に何かが聞こえたけど
外からの雑音で私の耳には届かなかった
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