嘘は取り消せない
桜と呼んだのはすごい久しぶりだった
だけどそんなことを気にする余裕もないほど
俺は言葉をどんどん並べる
今までのストレス
桜へのストレス
そして、

自分へのストレス

「違うのに……、違う」

「何が違うんだよ!
じゃあこの3年間何してたのか言ってみろ
どうせ違う男と遊んでたんじゃねぇのかよ」
俺の問いかけにただ桜は首を横に振るだけ
質問の答えが帰ってこないことにまた苛立つ

「今更帰ってきやがって
もういっそ帰ってこない方が良かった!」

するとその瞬間、桜の目がきっと開かれる
その目にはうっすらと涙が滲んでいる
「私だって死ぬ覚悟してた!」

「もう話すことはないと思ってた!」

「私がどんだけ悩んでるか知らないくせに
知ったような口聞かないでよ!」




「知るかよ……………」

「そんなこと知るかよ!
お前が何も言わずに離れてったんだろ!」

「泣けば許されると思ってるのかよ…
何なんだよ、お前そんなんだったんだな」

そして、次の言葉で桜の地雷を踏む



「どうせお前のことなんてなんも思ってない
大嫌いだ もう顔も見たくないほど
家族もめんどくさいとか思ってるだろうな
お前は嘘つきで最低な奴だから」

「…………っ!」

「うるさい、うるさいうるさい!
そんなの私が一番わかってる!
家族に迷惑かけてることも知ってる!
だから最低限心配かけないように、
迷惑かけないように嘘ついてる!
だけどそれの何が悪いの!?」

「どうせいつ死ぬかわからない人間が
何が出来るわけでもないけどさ!
少しでも負担をなくしてあげたい!
死んだ後、悲しまないように、
新しい人を見つけて、私のことを
忘れてくれるように人が頑張ってるのに!」

なんだよ、それ
もう俺は何も考えずに言葉を吐き出す

「じゃあ、死ねよ」

自分の口から出た声は、
俺が聞いても驚くほど冷たい声だった

「いつ死ぬかわからないんだろ」

「じゃあ、もう存在すんなよ」

「お前と同じ空間にいたくない」

その瞬間、桜は荷物を持って部屋を出ていった


俺が言ったことに、何一つ後悔などない


だけど、

なんで、

こんなにも胸が苦しいんだろう



「気持ち悪い」


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