嘘は取り消せない
桜side

秋月先生がイラつくのはわかっていた
明らかに今日は頭が回転しない
しかも、吐血があってからは
それを悟らせないように頑張った
頭の中では不安、疑問、恐怖…………etc
いろんなものが渦巻いて問題にも
集中出来ない


ペンを持つ手が震える、
身体中が冷えて、呼吸が苦しくなる
これは前までの病気の症状
それを我慢して
今この場で倒れまいと耐えていた

だからやっぱり問題に集中出来ない
そして秋月先生は集中しろという
こんなに間違えなかったって

私だって集中したいよ

だけどこんなぐちゃぐちゃになった頭で
何を考えられるというの

それを表に出さないように秋月先生の質問に
平然と言葉を返す

そこで、秋月先生は、蛍は
今までの、私に対しての思いを
すべて吐き出した


「3年前はこんな凡ミスしなかっただろ
前の授業でもこんなミスはなかった
何なんだよ
イライラすんだよ、平然としやがって
どうせ俺のことも遊びだったくせに」

3年前のことを覚えてくれてたのは嬉しい

だけど遊びだと思われたことにショックを
受けた

「……っ……………」

何かを言おうとしたけど言葉が出ない
そして蛍はどんどん言葉を繋げてく

「桜はいいよな 別に何やっても許される
俺とは違って家族に愛されてる
だから俺のこと振っても別に誰も咎めない
ふざけんじゃねぇぞ
どうせ3年前に付き合ってたのも
俺が可愛そうだったからとかじゃ
ないのかよ いい子ちゃんぶりやがって」

いい子ちゃんぶってない
可愛そうだからじゃない
違う…………………………

「違う……、違のに、」

「何が違うんだよ!
じゃあこの3年間何してたのか言ってみろ
どうせ違う男と遊んでたんじゃ
ねぇのかよ」
3年間何してたかなんて答えられない
それを答えてしまったら今までの努力が
無駄になる


「今更帰ってきやがって
もういっそ帰ってこない方が良かった!」

“帰ってこない方が良かった”

その言葉は頭に響く
頭が痛い



その結果、俯くしかなかった顔を上げ、
蛍をきっと睨みつけた
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