嘘は取り消せない
九ノ瀬君を探しに外へ出る

「いつもの通り道にいるかな」

そう思い、塾の通学路へと向かう
だけどそう簡単に物事は進まない
「いない、か」
電話……
でも前に電話して迷惑かけたばかりだから
今はやめよう
あとは、近くの公園で待つという選択肢のみ
絶対通ってくれるなんて思わないけど
1時間だけ、2時間だけ、と待っているうちに
東の方にあった太陽が
いつの間にか真上で私を照りつけてる

「春だなぁ」
ぽかぽかしててとても気持ちのよい光
すごく眠たくなってくる
このままずっとこんな穏やかであってほしい



そしてそろそろお腹がすいてきた頃
視線の先ににあの茶色の柔らかそうな髪

「あ! 九ノ瀬君!」
急いで駆け寄って行くと
すごく驚いた顔をしていた
「倉科さん!?」

そして公園のベンチで二人並んで座る
「いつから待ってたんだよ 電話してくれれば
良かったのに」

やっぱり九ノ瀬君は優しい
私がこれから彼の思いを踏みにじるかも
しれないのに

「今日はね、前の話のことについて
言いに来たんだ」

そう、九ノ瀬君からの告白のこと

「九ノ瀬君からの告白、すごく嬉しかった」

「だけどまだ自分の気持ちが、何がなんなのか
よく分からなかった」

「九ノ瀬君は優しいし、頼れて、かっこいい」

「だけど未だに蛍のことを忘れられない
自分がいる」

この間ずっと九ノ瀬君は静かに話を
聞いてくれる
自分が振られるかもしれない状況なのに

「忘れられないのはまだ好きなのか、
それとも単に罪の意識からか
よく分からないけど」

「そんな私生半可な気持ちで九ノ瀬君の
真剣な気持ちに答えられない」

これが私の出した答え

「ごめんなさい」
九ノ瀬君は傷ついてしまったのだろうか
こんな私のことを蔑むだろうか
軽蔑するだろうか
罵倒するだろうか


だけど一言

「そっか………」

ただ一言だけ九ノ瀬君は呟いた

「考えてくれてありがとな」

九ノ瀬君は残念そうに苦笑いをする



だけど、私が伝えたいのは
ここから先だ
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