嘘は取り消せない
「……ん」
目が覚めると朝になっていた
あぁ、寝ちゃったのか………
鏡の前に立つと若干目元が腫れている

「あはは、泣いてたんだね」
情けない、自分が招いたことなのに
入院を始めたのが高校2年生、
私が17歳だった頃
それから三年の月日がたっている

「高校がないはずなのにこの時間になると
起きちゃうのよね……」
昔は蛍が迎えに来てくれるから
張り切ってたっけ?


もう、覚えてないや

「あ、桜姉」
「!! 湊、どうしたの? こんな時間に…」
「ん?俺はもう高校生だよ、部活があるから
この時間に起きないとね」
「あ、そっか…… 何部だっけ?」
「男子バスケ部」

男子バスケ部か………………

「あ、ごめ」
「なにが? でも凄いね〜 頑張って!!」

明るい声を出す
多分湊にはこれが嘘だということも
わかってしまうんだろう

男子バスケ部には蛍がいた
きっと湊は蛍に憧れて男子バスケ部に
入ったんだろう
昔はよく練習試合とか見に行ってたなぁ

「はぁ、未練がましいな……」



もう忘れちゃいたいな


だけど、だけど心の奥底では



忘れたくないっていう声が聞こえてくるんだ
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