嘘は取り消せない
九ノ瀬side

湊から連絡があった


倉科さんが階段から落ちた?
記憶障害が出るかもしれない?
そもそも、命を失ったり、脳死状態に
なったりはしないよな?

俺のトラウマが瞼に浮かぶ

しっかりしろ、俺!
冷静になれ!
まだ死ぬとは限らない
記憶障害が出る可能性があるだけで
決定ではない

「星野宮病院、車で5分か」

急げ
一秒でも早く




病院に着き、307号室を目指す

307号室………………………!
ここだ!

「はぁっはぁっ 倉科さんは!?」
病室に入ると、スーツを着たままの倉科さんのお兄さん、樹さんが立っていた
奥のベッドには倉科さんがいてその横には
湊がいる
「九ノ瀬君か、久しぶりだね
桜はまだ目を覚ましてない」
「そ、……ですか」
「打ちどころが悪かったみたいだ」


なんで倉科さんばっかりなんだよ
また倉科さんが苦しまないといけないのか?
まだ倉科さんが苦しまないといけないのか?


「なんでだよ…………ッ」


それから毎日お見舞いに行った
湊も学校に行く前と、帰ってきてから
毎日通っている
倉科さんのお父さん、誠さん
お母さん、千尋さんも出張から帰ってきてから
毎日顔を見に行っている
千尋さんなんて一日つきっきりの時もある



「倉科さん、大事な家族が待ってるんだ」

「早く目を覚ませ」




そんなこと願っても、倒れてから13日間
倉科さんが、動くことは無かった

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