嘘は取り消せない
今日へいつもと違った
ずっと同じ形で眠っていた倉科さんが動いた
目が、今まで固く閉じられていた目が

急いで千尋さんの元へ行く
「千尋さん!」
「九ノ瀬君? どうしたの?」
「倉科さんが目を覚ましたかも知れません!」
「それは本当!?」

また病室へ入る
すると横たわっていたはずの倉科さんが
上半身を起こしている
「先生呼んでくるわ!」
「わかりました!!」


「倉科さん! 倉科さん、覚えてるか!?」
記憶障害なんて、ないよな?
だって今まで、あれだけ頑張ってきたんだから

「先生! こっちです!」
「倉科さん!」
千尋さんが立花先生を連れてきた


だけど、倉科さんが放った言葉


“あの………どちら様ですか?”


その時、頭を鈍器で殴られたような感覚だった


嘘だろ……………………………

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