嘘は取り消せない
「湊と樹はもう遅いから家に帰りなさい」
「そうだね、九ノ瀬君も親が心配するから」
「あ、いや俺一人暮らしなんで」
「だめよ、今日はありがとう
また明日来てくれると嬉しいわ」
そして、九ノ瀬さんと樹兄、俺は部屋から
出ようとするが呼び止められた

「あの………来てくれて、
ありがとうございました」

「あと、明日休日なので、良ければ
私のこと、教えて下さい」

桜姉も自分のこと知ろうとしてるんだ
蛍さんのことを知ったら余計に
辛くなるだけなのに?
なんてことは口に出さない


俺は、桜姉の記憶が戻る手伝いを
しないといけない
俺がしてしまったことは
取り返せないことだから


「桜姉、明日も絶対来るから!」
「あぁ、家族、だしな」
「俺は友人として」





家に着き、帰りに買ったご飯をリビングで
食べる
いつも一緒に食べてた人が一人いないだけで
こんなにも静かなんだ
それが余計に俺の心に重くのしかかる

「樹兄、俺、取り返しのつかないことを
したよ」
「ん? 急にどうしたんだ?」
「俺が、家にいたのに、何も出来なかった」

それだけじゃない…………

「俺、あの時桜姉が2階にいて下に
呼んだんだ」

「俺が呼ばなければ、桜姉が、桜姉の記憶が
無くなることは無かったかもしれない!」

「俺が2階に行って用を済ましていれば…!」



「湊」

いつもと違う樹兄の声が2人だけの部屋に
響く

「お前のせいじゃない」
「あれは事故だ」
「俺達が弱気になってどうするんだ」
「きっと桜は記憶を失っても優しいから
俺達のこんな姿なんて見たくないはずだ」
もういっその事怒鳴り散らしてくれた方が
良かったのに………
そっちのほうが楽なのに………



だけど、樹兄の言う通りだ

「そうだね、俺達が桜姉を支えないと
いけないのに」
「弱気になっててどうするんだろう」
「ありがとう、樹兄」

「おう!」
あぁ、やっぱり樹兄はかっこいいや
自慢の兄だなぁ
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