嘘は取り消せない
樹side

「そういや、気になってたんだけど」
「ん?何が」
「いや、お前、桜が落ちたところ
見てないよな?」
「うん、見てない…………………」
湊が俯く
「あぁあ! 違うんだ! 湊を責めてるわけじゃ
なくてだな」

「桜はもうこの家で20年、まぁ正確には
17年過ごしてるわけだ」
「当然、家を工事なんてしてないだろ?」
「それなのに、階段から落ちるのかなって」
ずっと気になってた疑問
まぁ、運悪く足を滑らせたっていう可能性も
あることにはあると思うけど……
「たまたまじゃない?」
「俺もそう思ったんだが、
あんな打ちどころが悪いなんて
どうやって落ちたんだ?」

俺の純粋な疑問
俺の、経験から、言える疑問

「うーん、でも本当に偶然だったかも
しれないよ? 俺が呼んだ後、走ってたし
足を滑らせて、とか」
「俺、大学が医学部だっただろ?
その時よく会ったんだ」
「階段の手前で意識を失ったり、
気が遠くなったりして階段から
落ちるっていう人」

桜を治したい一心で入った医学部の知識が
使えるかもしれないと思って
だけど桜は助かった


再発の可能性を抱えて


「桜は入院していた時、よく意識を
飛ばしてた
実際に階段から落ちそうに
なったことだってあったんだ」
「え、ちょっと待ってよ」
察しのいい弟で助かる
桜と言い湊と言い、うちには天才揃いだなぁ


「そこから、俺はもしかしたら病気が
再発したんじゃないかと予想してみた」


大げさかもしれない、
階段から落ちただけで病気だなんて、
だけど十分にありうる可能性、
そして、俺達にとって桜は守らなければ
いけない対象なんだ
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