嘘は取り消せない
「なぁ、おい、璃月ってまさか……」
「あら、気づくの早いですねぇ」
立花さんは話している途中俺の顔を
面白そうに見ていた
そして話の中に出てきた“璃月”という人間は
前にも聞いたことがあった
「璃月って、成瀬璃月か?」
「あ、結構知ってるんですね
まぁ、昨日、倉科さんの兄、樹さんに
話を聞いてましたもんね」
聞いてたのかよ
「でも、璃月と秋月は兄弟って…………」
「そうですね、秋月君と璃月さんは
兄弟です ちゃんと血の繋がった
弟ですよ」
「秋月君は父親の方の苗字でしたが、
璃月さんは母親の方の苗字を
受け継いだそうですよ」
「それだけ、母親に望まれてなかった
みたいですね〜」
楽しそうに口角を上げて話す姿を見ると
寒気がする
「そもそも何でそんなこと知ってんだよ
倉科さんのことだって」
「いいところに気が付きましたね
あ、気づいて当然ですか」
「いいからさっさと答えろ」
「倉科さんのことそんなに好きなんですね
私も同じくらいか、それ以上に秋月君の
こと好きですよ?」
なかなか話を続けない立花さんに苛立ちの
念を送る
「わぁ、怖いですね、かっこいい顔が
台無しですよ」
「いいから、さっさと」
「この話を聞くことは倉科さんの為に
なるって最初に言いましたよね?」
!
「あぁ、」
「じゃあ単刀直入に言いますね」
「今後、倉科桜を秋月君に近づけないで
ください」
「は…………………?」
「秋月君はいつまで経っても私のことだけを
見てくれません」
それから立花さんは話し続ける
「それはきっとまだ倉科桜が秋月君の中に
いるから」
「そんなの認めない」
「だって、わざわざ学校まで調べて
会いに行って」
「倉科さんと別れたって聞いたから
上手いこと傷に入り込めたのに」
「まだ邪魔して来るもの」
「秋月君には私も彼氏に捨てられたって
言ってあるけど、そんなのただの口実よ」
「だって、中学生の時からずっと
好きだったの」
「そして、やっと手に入ったと思ったら
心までは手に入らなくて」
「倉科さんの存在自体が邪魔なのよ」
すると突然こちらに話しかけてくる立花さん
その目は憎悪に満ちていて
「私はあなたも許しませんよ」
「は?」
標的が変わり、倉科さんから俺になった
だけど倉科さんが悪く言われるより
マシだった
マシだと思ってた_______________
だけど、結局立花さんの口から出た言葉に
傷ついたのは俺自身だった