嘘は取り消せない
「私があなたを許すとでも
思ってるんですか」

「あなたのせいで伊奈帆は、」

「伊奈帆は未だに目が覚めないんですよ」

「それどころかもう起きないんですよね」

「覚えてないんですか?」

「あなたが庇って植物状態にさせた
女の子は……………」




「立花伊奈帆、私の妹ですよ?」

は……………………?


「嘘、だろ?」
「嘘つく必要ありますか?」
「歳はだいぶ離れてますけどね
私の大事な大事な妹なんですよ」
怒りを込めた目で、憎悪に満ちた目で、
俺を見る



俺はそんな目で見られて耐えられなかった
耐えられるような心を、精神を
持ってはいなかった


俺がおかしくなっていた時よく見た夢の中に
こういうシーンあったっけ
女の子を庇ったあと、色々な人からの
汚いものを見るかのような目
それが、トラウマになってしまっているのに



「だから私は貴方に命令できる権利を
持ってるんですよ、人殺しさん」
「なっ、殺してなんか、」
「目が覚めないなら死んだも同然ですよ」
「…っ」
「あと、倉科さんの専属医は私の父ですし
もし毒なんて混ぜてもバレない
でしょうね」
毒?
「そんなん許されるわけないだろ」
「謎の病による余命宣告を受けて
いたんですしそれのせいにしてしまえば
証拠隠滅できるんじゃないでしょうか」
「あの子が死んじゃえば秋月君は
心まで私のものになる」
おかしい、狂ってる
好きな相手のためなら人殺しもするのかよ
「そんな事のために……………」
「そんなこと?」

「私にとって秋月君はこの世で一番大切な
存在なんですよ」
「あ、伊奈帆の次ですけどね」
「親よりも、友達よりも一番大切で」
「貴方が伊奈帆をあんなんにしなければ」
「私が倉科さんを殺す計画をすることは
なかったんですけどね」

じゃあ、全部俺のせいで_______________

“じゃあよろしくお願いしますね”と、
立花さんはどこかへ行ってしまった
俺はその後、放心状態だった


結局その日は倉科さんのお見舞いには
行かなかった


行けなかった_______________
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