嘘は取り消せない
次の日、九ノ瀬君が来た
それから九ノ瀬君は毎日来てくれてた
蛍君の名前なんて一言も出さない
来なかった日から様子がおかしかったけど
大丈夫です、と言われたから余計な検索は
できない



そして今日は祝日だから家族全員揃っていた
まだ桜の記憶がいつも取るかわからないから
念のため1年間だけ入院をすることに
なっている
戻る可能性は少ないけど
今が幸せならそれでいい
「あの、九ノ瀬さんは仕事してますか?」
「えっ、」
「あの、いつも来てもらって申し訳なくて
自由な時間がないと疲れてしまいます
から」
桜は優しいな
「してるけど……
別にいいよ、俺が好きできてるんだし」
へぇ、そうなのか
「桜のことが好きなのか?」
「え、あっ、いや………まぁ」
肯定してしまってる、九ノ瀬君
「ははっ、素直なのはいいことだな
青春かぁ」
「樹兄はもう出来ないもんね」
「なっ、まだまだあるから!」
「桜が一人暮らしとかしたら俺泣くかも」
「お父さんには私がいるわよ」
「ねぇ、こんな所でイチャイチャしないで」
「あら、ごめんなさいねぇ
湊も青春しなさいよ」
「う、うるさいな」



「ふふっ」


「桜?どうしたんだ?」
桜を見るとベッドの上で笑っていた
「なんか幸せだなって」
「!」
桜の笑顔を見たのは久しぶりだった
今までの笑顔はなにか遠慮して
微笑む程度だったから
「桜もこの中の一員だから遠慮は
するなよ?」
「そうだよ、桜姉」
「桜が何であれ」
「私たちの大切な娘なんだから」
「母さん、被せないで!」
「あら、いいじゃないの」

「ま、そういう事だから
どんどん入ってこいよ」


「ありがとうございます……っ」
桜の記憶が戻らなくても俺達の
大事な人たちだからな








だけど、不幸少女が笑えば神様は悪戯する
「やっぱり幸せの次は不幸が
待ってるんだな」


いつ、幸せは降りてくるんだろうね
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