嘘は取り消せない
「やぁ、理恵さん そちらが例の娘さん?」
「倉科桜です よろしくお願いします!」
スーツを纏った四十代後半の男性が
近づいてきた
すごく賢そうな人
「えぇ、色々理由あって高校を途中から
行ってないから一体一で教えて
くれるかしら 理解力は誰にも負けないわ」

_______________英語以外わね

ボソッと、最後に呟いた言葉は誰にも
届かなかった

「お、お母さん!?」
「へぇ、それはすごいな」
ハードル上げないでよ、お母さん
私そんなに勉強出来ないのに……………

「でも教えるのは僕じゃないんだ」
「あら、そうなの?」
「桜さんも歳が近い方が親しみやすいと
思ってね 呼んでくるから此処で
待っててくれるかい」
「えぇ」

歳が近い人かぁ
どんな人かなぁ
優しい人だと嬉しいな

なんて、勝手な想像ばかり


そして少しの時間が空いたあと、塾長が
出ていった扉がもう一度開かれた


「ほら、蛍君 君の生徒だ」

その瞬間心臓が大きく跳ねる
え……………蛍?
きっと違うよね? 同じ名前なだけだよね?
隣のお母さんを見ても口を開けたまま

ゆっくり扉から入ってきた男性の方に
目をやる

「う、そ………」

「この子が秋月蛍君
桜さんと同じく二十歳の子だよ」



ねぇ、誰か嘘って言って


神様はとっても意地悪なのね
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