嘘は取り消せない
それから夏もすぎた
いつだっけな
約束したことを思い出す

“ねぇ、蛍 今度花火見に行こう”
“人が多いのは嫌だな”
“そういうと思って人が少ない場所、
調べたんだよ”
“ありがと”
“蛍が喜ぶならなんでもするよ”


桜は誰よりも俺を理解して
俺を兄だと見ずにいてくれた
俺が親から見捨てられてることを
内緒にしていても
“話したくなったら言ってね”
って、待っててくれた


「いつでも待ってるからな、九ノ瀬も、
樹さんも千尋さんも誠さんも、湊も」
「みんな、待ってるから」





「秋月、そろそろ昼食の時間だ」
「あぁ、分かった」



多分、いや絶対、俺なんかより、
九ノ瀬遥の方がいいやつだよな
人として

まぁ、俺なんかと比べたら
全然いい人間だと思う






「九ノ瀬、」
「なんだ?」
「桜を頼む」
「え…………、」
「あぁ、いなくなる訳じゃない
桜が目を覚ました時の事だ」


桜が目を覚ますまで離れるわけには
行かないだろ_______________


「じゃあ、なんでその後
離れるつもりなんだよ」
「許されたくないから、」
「は?」
「桜は優しいから謝ったら絶対に
俺のこと許す」
「俺は許されないことをした」
「だから許されたくない」

許されてしまったら、俺は自分のことを
許してしまいそうで

それがすごく嫌なんだ
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