人魚姫のカウントダウン
半年前、私は彼に殺された。
「ここにいる二人、我が社のホープ・宇田蒼くんと愛川妃美さんが婚約しました」
あれは6月のある月曜日。
部署内の朝礼で彼と社長令嬢の愛川さんが部長の隣に並んでそう紹介された。
周りは拍手喝采、笑顔で二人を祝福してる。
――宇田蒼クント愛川妃美サンガ婚約シマシタ
めまいがした。吐き気がした。
足の力が入らない。震えがとまらない。
彼は私の恋人ではなかったのか。
幸か不幸か。私にとっては間違いなく後者であり、彼にとってはおそらく前者だろう。
社内恋愛をウチの会社は快く思われなかったから、私たちが付き合っていることは秘密にしていたから。
――宇田蒼クント愛川妃美サンガ婚約シマシタ
――宇田蒼クント愛川妃美サンガ婚約シマシタ
――宇田蒼クント愛川妃美サンガ婚約シマシタ
部長の言葉が木霊する。
真夏の蝉の大合唱みたいにワシャワシャと五月蝿く鳴り響いている。
きっとなにかの間違いよ。