黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
2.


「じゃあ明日も元気に登校してくるように。さようなら」


先生の挨拶と共に、今日の授業が終わりを告げる。


「啓太!今日会えたら頑張れよ」


「うん、久保田君色々とありがとう」


「おう!そういえば俺のこと久保田君じゃなくて、としって呼んでくれればいいから。明日から絶対そうしろよ!」


久保田君はそう言うと、勢いよく教室を飛び出し部活へと向かう。


とし……


心の中でそう呼んでみる。


今まで人をあだ名で呼んだことなんてないから、何か変な感じだ。


久保田君……いや、としと今日作戦会議をした結果、僕は彼から三つのミッションを課せられていた。


一つは敬語を使わずに話すこと。


次に下の名前で呼ぶこと。


そして最後に連絡先を交換することだ。


三つとも僕にはハードルが高すぎて、今から不安でたまらない。


ただこのミッションをクリアしないと、としに購買のパンを奢らなければいけなくなる。


「よし!」


期待と不安が入り混じった複雑な気持ちをいったん胸の中にしまい込み、覚悟を決めて席を立つ。

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