黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
__________


今日も昨日に負けないぐらいの快晴で、土手を進んでいると本当に開放的な気分になる。


蒼井さんは今日来てくれるかな……


彼女が来てくれなければ、今日のとしとの作戦会議は意味のないものになってしまう。


ただ来てくれたところで、緊張でうまく話せなくなってしまうのではないかという怖さがあることも事実だ。


来てほしいような……来てほしくないような……そんな複雑な気持ちで自転車を漕いでいると、土手から満開の桜に囲まれた、僕の“第二の家”が見えてくる。


家が見えてくると、心がほっこりするこの感じが僕は好きでたまらない。


はやる気持ちを抑えながら自転車を漕ぎ進めていくと、家の前に何かがとまっているのが目に入った。


メガネをかけ直し、目を凝らしてよく見ると、家の前にクリーム色の自転車がとまっている。


うわっ、蒼井さんが来てる!


さっきまでのほっこりとした気持ちとは打って変わって、一気に緊張感が高まってくる。


今までの僕ならきっと、ここで引き返して、明日としに蒼井さんは来なかったと嘘をついて逃げていただろう。


でも僕は、もう色んなことから逃げないと心の中で決めていた。


今まで逃げ続けてきてよかったことなんて何ひとつなかったし、何より勇気を出して、一歩踏み出すことの大切さを自己紹介のときに学んだからだ。


どこまでも続く広大な空を見上げて、一度深呼吸をし、心を落ち着かせる。


それからもう後戻りできないように、としに“行ってくる!”とだけラインして、勢いよくペダルを漕ぎ出す。

< 14 / 46 >

この作品をシェア

pagetop