黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
頭の中では浮かんでいる答えがあるけれど、それを伝えるには相当な勇気がいるし、できれば心の中に留めておきたいものだった。
ただ僕の中に、それを伝える以外の選択肢はもう残っていなかった。
「実は今日、蒼井さんにもしかしたら会えるんじゃないかと思ってここに来たんです。蒼井さんがまたここに来るんじゃないかと思って……」
恥ずかしすぎて、思わず目を逸らす。
こんなことを女の子に言ったのは初めてなので、どんな顔をしていればいいのか全然わからない。
しばらく蒼井さんと目が合わせられず、桜を眺めているふりをしていると、彼女が目の前に来て恥ずかしそうにノートを差し出してきた。
【実はさっきの居心地がよかったっていうのは事実なんですけど、本当は私もまた黒木君に会えるんじゃないかと思って今日ここに来たんです。】
「えっ、あぁ……」
嬉しさ、喜びが全身を包んでいるのだが、こういうときの感情表現の仕方は、僕の中の教科書のどのページを探しても載っていない。
「こんな展開になるとは予想してなくて……作戦会議のときにも出てこなかったし……あっ!」
動揺しすぎて、思わず心の声が出てしまった。
【作戦会議って何ですか?】
もうどう取り繕っても無駄だと感じたので、正直にありのままを話してみる。