黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
「実は今日学校で、もしも蒼井さんに会えたときの為に、友達と作戦会議をしたんです」
蒼井さんはくすくす笑っている。
「そこで友達に三つのミッションを課せられて……」
【どんなミッションなんですか?】
「えっと……まずは敬語を使わずに話すことです」
すると彼女は、勢いよくノートに何か書き始めた。
【それすごくいいです!よかったらそうしませんか?】
思わぬ反応に、ちょっとびっくりする。
「ぜひそうしましょう!」
【じゃあこれから敬語はなしね。】
「……うん、わかった」
何だかちょっと照れくさい。
【二つ目のミッションは?】
「二つ目は下の名前で呼ぶってことなんだけど」
さっきと同じくらいのスピードで、また勢いよく書き始める。
【それもすごくいい!じゃあ私は啓太君って呼ぶね。】
「じゃあ僕はふみちゃんって呼ぶね」
今この瞬間が、もしかしたら生きてきた中で一番幸せな時間かもしれない。