黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋


「実は今日学校で、もしも蒼井さんに会えたときの為に、友達と作戦会議をしたんです」


蒼井さんはくすくす笑っている。


「そこで友達に三つのミッションを課せられて……」


【どんなミッションなんですか?】


「えっと……まずは敬語を使わずに話すことです」


すると彼女は、勢いよくノートに何か書き始めた。


【それすごくいいです!よかったらそうしませんか?】


思わぬ反応に、ちょっとびっくりする。


「ぜひそうしましょう!」


【じゃあこれから敬語はなしね。】


「……うん、わかった」


何だかちょっと照れくさい。


【二つ目のミッションは?】


「二つ目は下の名前で呼ぶってことなんだけど」


さっきと同じくらいのスピードで、また勢いよく書き始める。


【それもすごくいい!じゃあ私は啓太君って呼ぶね。】


「じゃあ僕はふみちゃんって呼ぶね」


今この瞬間が、もしかしたら生きてきた中で一番幸せな時間かもしれない。

< 17 / 46 >

この作品をシェア

pagetop