黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
「じゃあ次は黒木君だね。よろしく!」
久保田君の後なので非常に気まずいが、覚悟を決めて席を立つ。
「名前は黒木啓太といいます。趣味は特にないんですが、読書はわりと好きです」
よし、今日は普通に声が出せてる!
高校一年の自己紹介のときに、緊張で声が裏返ってしまった苦い思い出があるので、心の重荷が少しだけ軽くなる。
いつもならここでよろしくと言って終わりなのだが、今日は自分のありのままの想いを伝えると決めていた。
ずり落ちてきた黒縁メガネをかけ直し、深呼吸をして心を落ち着かせる。
「僕は人見知りで不器用な性格なので、今まで友達ができず、ずっと一人でした。でもみんなと同じように友達を作って、色んな話をしたい気持ちはあります」
怖さが体のあらゆる部分をつついてくるが、自分に鞭打って話し続ける。
「こんな暗そうで面白みがない僕ですが、仲良くしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします!」
これが今の僕の素直な気持ちだった。
下げていた頭を上げて周りを見渡してみると、みんなのポカンとした顔が目に入ってくる。
恥ずかしさが急激に込み上げてきて、今すぐにでもこの教室から逃げ出したい。