黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
「それで俺は土日部活あって無理だから、平日の学校終わりでよろしく!来週だと……確か木曜日が休みだったな」
まだ一言も遊ぶとは言っていないのに、としはどんどん話を進めていく。
「そういえば“遊びませんか?”って書くだけじゃいかんぞ。それだと日程がなかなか決まらず、遊ぶのがずっと先になっちゃうから、しっかり頭に“来週の木曜日”を付けんと。それと集合場所を書くのも忘れんようにな。場所はお前に任せる!」
もうなぜだか後に引ける状況ではなくなってしまったので、急いで鞄からメモ帳を取り出す。
書いておかないとすぐに忘れてしまう性分なのだ。
「あとふみちゃんが女の子一人だけだと心細いと思うから、前話してたふみちゃんの親友の子も誘っていいって書いとけよ」
「うん、わかった」
授業中ではないが、不思議と“久保田先生”の授業を受けているような気分になってくる。
その後も久保田先生のありがたい助言を時間を忘れて聞いていると、きりがついたところで少しの間沈黙が続いた。
としがふと、腕時計に目をやる。
「うわっ、もうこんな時間やん!」
としがいきなり叫んだ反動で、自然と黒板の上にある時計に目がいくと、時刻は十二時半に差し掛かろうとしていた。
昼休憩が終わるまで、およそ残り十分。