黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋


思えばとしに出会ってから、昼休憩の時間が本当に短く感じられるようになった。


としとご飯を食べながら他愛もない会話をしている時間は本当に楽しいし、彼が他のクラスメートとの橋渡し役になってくれるおかげで、二年に上がってから孤独を感じることはほとんどなかった。


としには本当に感謝してもしきれない。


今まで昼休みの間中図書室に籠っていた自分が、今では嘘のように思える。


「おい、はやく食べないと次の授業間に合わねぇぞ!」


相変わらずのきつい言い方だが、不思議と嫌な気分にならないのも彼の魅力の一つだ。


たぶん周りのクラスメートも同じように感じていると思う。


「もう少し優しく言うべきじゃないかな?」


すると突然隣りの席の羽田野君が、僕たち“二人”の空間に割って入ってきた。


表情から察するに、彼はそうは感じていないようだ。


羽田野君はクラスの学級委員で、としとは正反対の真面目な性格なので、二人は意見が食い違うことが多く、その度に言い争っている。


二人には申し訳ないが、その光景を傍から見ていると本当に面白くて仕方ない。


また今日も言い争いを始めた二人を尻目に、ふと周りを見渡してみると、みんなそれぞれ次の授業の準備をしていたり、友達と話していたり、本を読んでいたりと様々な時間を過ごしている。


ただ未だに机の上に弁当箱を広げてご飯を食べているのは、もうどこを探しても僕たち“三人”だけだった。

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