黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
「じゃあ啓太はいつも一人で帰ってるの?」
「うん。休憩がてら一回図書室に寄って、校内が落ち着いてきたところで帰るようにしてる」
「俺が部活ない日、誘ってくれればいつでも一緒に帰ったのに……」
「としが部活がない日も野球部のみんなと一緒に帰ってるのを知ってたから、その邪魔をしてはいけないと思ってたんだ……」
そこでとしは一度大きく息を吸い込んで、吸い込んだ分の空気を一気に吐き出した。
その一連の動作から、彼がこれから大事な話をしようとしていることは明白だった。
「確かに野球部のやつらと約束している日もある。でも俺はずっと啓太とも一緒に帰りたいと思ってたんだ」
そう言うと、としはいったん立ち止まって、僕がいる右側に九十度体の向きを変えた。
僕も反射的にとしのほうに体を向け、真正面から向き合う形になると、彼は今まで見せたことのないような真剣な表情をしていたので、僕は思わず息をのんだ。