黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
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萌北駅に着くと、自転車通学なので全くといっていいほど電車に乗らない分、駅の広さや大きさに圧倒された。


萌北駅が特別大きいのかどうかはわからないが、僕の頭の中の駅のイメージは田舎町にある少し古びれた駅(ドラマの影響による)しかなかったので、駅にカフェや軽食屋があることにいささか驚いた。


たぶん学校帰りであろう、萌北駅の近くにある男子校の制服を着た五人組が、楽しそうに談笑しながらカフェの中に入っていく。


その光景をぼんやり眺めていると、僕はある重大なミスを犯したことに気がついた。


「そういえば駅のどこを集合場所にしたんだ?」


「えっ」


としにいきなりミスを指摘され、動揺のあまり口からほぼ空気だけで形成された言葉がこぼれ落ちる。


「お前もしかして駅に集合としか書いてないのか?」


「ごめん……そこまで頭が回らなかった」


としはあきれた感情を存分に詰め込んだ、長いため息をひとつついてから言った。


「こういうときは動きまわるよりもどこかでじっと待ってたほうがいいから、そこのベンチに座って待っていよう」


そして僕らはカボチャ型の植木鉢(比較的大きい)が大体正方形になるように四つ置かれてあり、それを取り囲むように設置されているベンチのうちのひとつに腰掛け、ただじっとふみちゃんたちが来るのを待つことにした。

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