黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋


突然のことに、人見知りスイッチとはまた違う“〇〇スイッチ”が作動してしまい、完全に身動きがとれなくなってしまう。


ほぼ確実に固まっている僕に対してであろう、少し派手な髪型と化粧をしている二人組の女子高生が、「ウケる」と言い合いながら目の前を通り過ぎていく。


ただ今の僕の頭の中は、恥ずかしさという感情が入る余地がないほど、この見つめ合っている状況を打開するための数々の案でいっぱいいっぱいだった。


一筋の汗が、右頬を伝う。


すると突然、ふみちゃんの隣に座っているショートカットの女の子がベンチから立ち上がり、僕のほうへ歩み寄ってきた。


パンク寸前だった頭の中が一瞬にして空っぽになり、〇〇スイッチから人見知りスイッチへと切り替わる。


ふみちゃんの親友であろうその女の子が一歩一歩近づいてくるにつれ、僕は彼女のある特徴に衝撃を受けた。


「黒木君ですよね?」


「はい、そうです」


僕は顎を上げて、まるで上目遣いで男を虜にする女の子のような格好で答える。


しかしこれは決して狙ってしているわけではなく、顔を上げないことには彼女と目線を合わせることができないのだ。


ふみちゃんの親友であろうその女の子は、とんでもなく身長が高かった。

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