黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋


「はじめまして。ふみの友達の立花由香といいます」


「黒木啓太といいます。よろしくお願いします」


案の定、緊張からなかなか言葉が続いてこない。


なす術もなく沈黙の波に流され始めると、いつの間にか立花さんの斜め後ろに立っていたふみちゃんと不意に目が合い、お互いに少しぎこちない会釈を交わす。


ただ彼女を見た途端、ざわついていた心の炎に安らぎの雨が降りそそいだかのように、不思議と落ち着きを取り戻し始めている自分がいた。


「そういえば黒木君のお友達はどこにいるんですか?」


「えっと……」


視線を、僕らが座っていたベンチのほうへ向ける。


すると、ベンチに焦点が合うよりも先に、満面の笑みを浮かべながらこちらに勢いよく駆け寄ってくる僕の“友達”の姿が目に飛び込んできた。


安らぎの雨が、儚くも降り止もうとしている。


「はじめまして!もしかしてふみちゃんですか?めっちゃデカいですね!」


さきほどよりも激しさを増した炎が、心の中に宿る。


「えっと……誰ですか?」


「啓太の友達の、久保田敏也っていいます!あれっ……話せるんでしたっけ?」


「私はふみの友・達の、立花由香といいます」


立花さんが、“友達”の部分を露骨に強調して答える。


「あっ、えっと……すみません」


ものすごい形相で答えた立花さんに気圧されたのか、学校では敵なしのとしがたじろいでいる。


僕は驚きのあまり開いた口がふさがらない状態だったのだが、立花さんの性格を熟知しているであろうふみちゃんは、立花さんの背に隠れるようにしてくすくす笑っていた。

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