黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋
今日もいつもと何ら変わりのないこの道。
しかしなぜだろう、いつもより風が気持ちよく、空の青さがとても綺麗に感じる。
人は一歩踏み出して自分の殻を破ると、こんなにも目の前の世界が変わって、前向きな気持ちになれるなんて思いもしなかった。
心地よい風を感じながら気持ちよく土手を進んでいき、大体土手を半分ほど渡り終えると、いつものように河川敷へと続く道が見えてくる。
その道を通って河川敷に降りて奥に少し進むと、たくさんの木々に囲まれた隠れ家のような場所にたどり着く。
ここは僕が入学して間もないころにたまたま見つけた、一番心を安らげることができる秘密の場所だ。
いつも辛いことがあるたびに、必ずここに来て一人で泣いていた。
明るい気持ちでここに来れたのは、もしかしたら今日が初めてかもしれない。
今の季節特有の満開の桜が、僕の心をさらに明るい色に染めてくれる。
綺麗な桜を眺めていると、無性に“桜ソング”が聴きたくなり、ポケットからウォークマンを取り出して、リストの中から桜ソングを順に聴いていく。
周りに人が全然いないので、ある程度声を出して歌っても気にならないのがこの場所の利点だ。
目を瞑りながら自分の世界に入り込み、気持ちよく歌っていると、背後で何か物が落ちる音がした。
嫌な予感がする……