黒板に住む、文字で彩られた僕の初恋


「今部活終わった!啓太今何してるの?」


いきなり下の名前で呼ばれたことに、いささか驚く。


「えっと……今は河川敷で夕焼けを見てます」


「もしかして彼女とか?」


声色からして、嫌味を存分に含んでいることが伝わってくる。


「ち、違いますよ!一人です」


「またまた~」


「信じてください!」


「わかった、信じるよ。まあお前に彼女がいるとは思えんしな~」


彼は正直な人なので、悪気はないだろうが少し傷つく。


「あと敬語じゃなくていいからな。俺ら友達なんだし」


「うん……わかった」


敬語を使わず同級生と話したのは、これが初めてかもしれない。


また一つ階段をのぼれた気がする。

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