【完】キミにぞっこん
「いや、無理じゃなければなんだけど」



覇気がなくなってしまう俺の声。



「これってチケットとるの難しいんじゃ?」


「あー。なんかもらったんだよね。二枚」



そうモトカノから。
なんて言えないよな。


彼女に見せたものは
アイルトンセナの没後20年の
展示会みたいなやつ。


ちょっと前まで付き合ってたやつが



『星那といえばー』



とかってくれた。
一緒に行く前に別れたけど。



「一緒に行く人いないんですか?」


「ん。一人で行こうかなって思ってた」


「じゃあ、一人で行ったほうが…」


「いや、君と行きたい」



俺はまっすぐに彼女を見つめる。



「…如月さん」


「俺といくのいやじゃなかったら一緒にいってくれないかな?」


「…はい」


「よかった。じゃあこれ」



俺はチケットを差し出す。



「ありがとうございます」



彼女は大事そうにカバンにしまう。
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