【完】キミにぞっこん
「聞いてない…」



そんなことを聞こえないように呟いても



「愛來なにをきいてないの?」



和歌には聞こえたみたいで。



「なんでもない」



あたしはその場にあったお酒をぐいっと飲み干す。



「ちょ、それ愛來のじゃなくて北条さんのお酒じゃん」



和歌がぎょっとした顔をする。



「ごめんなさい、北条さん」


「いや、また頼めばいいし。澤上もなんか頼めよ」



二つ上の北条さんがにこっとあたしにメニューを差し出してくれる。



「ありがとうございます」



北条さんからメニューを受け取る。



「ビールでいいや」


「え、そんなにビール飲めないじゃん」



和歌が焦ったようにいう。



「飲みたい気分」


そんな時もあるもんだ。


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