【完】キミにぞっこん
「待てって!」



廊下に出たあたしをそれでも追いかけてくる。



「お願いだから」



あたしに星那が追いつく。



「離してよ」


「離さない」



気づけば星那の腕の中にすっぽり包まれていた。



「ちゃんと話して」


「……っ」



星那の温もりを感じているのに
こんな風に会うのだったら会わなくてよかった。

星那が出張に出発してからもうすぐ一ヶ月が経とうとしていた。

一ヶ月ぶりの再会がこんなのって。



「なにかあった?」



星那があたしの顔をのぞき込む。



「…っ」



久しぶりに見た星那の顔は
やっぱりカッコよくて。
どうしてもこの人が好きなんだって思い知らされる。



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