【完】キミにぞっこん
「部屋まで送ってってやるから。行くぞ」



桑名は俺の手を握ったまま。

まぁいいか。
酔ってるし。


「歩ける?」


「うん」



俺の言葉に入口に向かって歩き出す。



「苦手なくせにここまで飲むなよな」


「莉佳のこと…好きなのかと…」



しゅんとしながら答える。



「んなわけあるか」



俺は繋いでないほうの手で桑名の頭を叩く。



「すいません」


「いーけど」



こうやって言うってことは
こいつマジで俺のことが好きなんだな。


入口を入る真っ暗だったエントランスに明かりが灯る。



「如月さんは札幌の彼女がいますもんね」


「あー。だから葛城なわけ…」



あくびをしながらそう言いかけて言葉と歩きが止まる。



「如月さん?」



不思議そうな顔をして俺をみる。



俺らにぶつかって走っていく女の子。





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