【完】キミにぞっこん
どれだけ走っただろう。

来たことのないような公園のブランコに
大好きな女の子の背中があるのを見つける。


…愛來。



俺はゆっくりとその背中にちかづく。



「…愛來」



俺の言葉に肩をビクッと揺らす。



「来るなら言ってよ」



こんなことを言う場合じゃないのに。
俺の口から出たのはこんな言葉。

焦って何言っていいかわかんない。
なんだよ。これ。
恋愛初心者か?



「それは、見られたらまずいものがあるから?」



愛來が俺の顔をみる。
泣きはらした顔で。


まーた泣かせちまった。



「違うよ」



俺は愛來の涙を拭う。



「だってさっき…」



愛來が俺の手を見つめる。



「たしかに手は繋いでたよ。でもただ、あいつが酔いつぶれただけだから」


「でももうそんな感じじゃなかった」


「タクシーの中までは酔いつぶれてたの」



焦ってしまってイライラした口調になってしまう。


< 163 / 235 >

この作品をシェア

pagetop